お知らせ
卒業生の宮房くんが関わった研究成果が、Archives of Biochemistry and Biophysics 誌に受理・公開されました!
アポカロテノイドは、カロテノイドのポリエン直鎖上共役二重結合部位で開裂して生じる化合物です。動物は食物を通してカロテノイドを摂取し、それをアポカロテノイドへと代謝します。これまでに植物中や動物体内でいくつかのアポカロテノイドが同定されていますが、それらの健康機能性については未だ十分に理解されていません。そこで本研究では、慢性炎症疾患の発症に関わる免疫細胞であるマクロファージに対する、apo-12'-capsorubinalの生物活性を模索しました。RAW264.7マクロファージを炎症誘導物質であるリポポリサッカライド(LPS)で刺激すると、炎症性サイトカインであるIL-6 の発現が遺伝子レベルおよびタンパク質レベルで増加します。しかしながら、apo-12'-capsorubinalを予め添加した細胞では、このような炎症性因子の発現誘導が抑制されることが分かりました。さらに、apo-12'-capsorubinalは、細胞内恒常性維持に関わるシステムであるnuclear factor erythroid 2-related factor 2(Nrf2)の核内移行を促進し、HO-1などのNrf2標的遺伝子の発現を誘導することを見出しました。対照的に、apo-12'-capsorubinalの C-8 にヒドロキシ基が導入されたapo-12'-mytiloxanthinalは、抗炎症およびNrf2活性化作用を示しませんでした。以上の結果より、ポリエン鎖の直鎖部分にある α, β-不飽和カルボニル基上の β 炭素(C-8)が、apo-12'-capsorubinalの活性発現に関わる可能性が示唆されました(下図)。本研究は、未だ不明な点が多いキサントフィル由来アポカロテノイドの生理学的意義の理解に加えて、ニュートラシューティカルおよびファーマシューティカルなどのアポカロテノイド利用に向けた基礎知見の一つになると期待されます(詳細はこちら)。