お知らせ
高谷助教の論文が、Applied Microbiology and Biotechnology 誌に受理・公開されました!
カロテノイドは赤から黄色を示す天然の脂溶性色素化合物であり、抗酸化作用をはじめとした様々な健康機能性が期待されています。カロテノイドは、分子末端(エンドグループ)の環状化修飾により両環式(ジサイクリック)カロテノイドと単環式(モノサイクリック)カロテノイドに分類されます。モノサイクリックカロテノイドは希少化合物であり、その種類や自然界における生産種について十分に明らかにされていません。一方、モノサイクリックカロテノイドはジサイクリックカロテノイドと比べて、高い抗酸化活性や神経細胞保護作用を示すことが報告されています。したがって、モノサイクリックカロテノイドの分子構造同定や生産種の探索は、将来その利用に向けた基礎知見として有用です。本研究では、沖縄県瀬長島で採取した海藻表面より、赤色のコロニーを形成するAlgoriphagus sp. oki45株の単離に成功しました。高速液体クロマトグラフィー、核磁気共鳴分光法、高分解能質量分析などの機器分析により、本株の産生する色素成分として、モノサイクリックカロテノイドである(3S)-flexixanthinおよび(2R,3S)-2-hydroxyflexixanthinが同定されました。特に、2-hydroxyflexixanthinはこれまでに報告のない新規化合物であり、近縁種であるA. confluentis NBRC111222TやA. taiwanensis JCM19755Tにおいても産生することが確認できました。これらAlgoriphagus属細菌3株のゲノム解析の結果、flexixanthinの生合成に必要な8つの遺伝子(crtE, crtB, crtI, cruF, crtD, crtYcd, crtW, crtZ)に加えて、C-2位のヒドロキシ化反応を触媒する酵素遺伝子crtGと相同性のある遺伝子が見いだされました。本成果は、未だ不明な点が多いモノサイクリックカロテノイドの生合成系に新たな知見をもたらすとともに、単離したモノサイクリックカロテノイドの生物活性評価や、大腸菌などを用いた異宿主生産系における遺伝子資源としての活用に繋がることが期待されます(詳細はこちら)。